2009年6月、au携帯電話向け情報配信サービス「EZニュースEX」が、朝日新聞社とテレビ朝日のマスコミ2社と携帯キャリアのKDDIのコラボレーションにより誕生した。
auユーザーは、端末(一部機種を除く)から「EZニュースEX」へ登録することで、毎日、一般ニュースが200本以上、芸能・スポーツはあわせて50本以上の情報が得られる。さらに、報道機関が運営する情報サービスであることの一番の売りとして、「超速報」がある。これは、テレビの速報テロップと同じタイミングで注目度の高いニュースをアプリ対応機種に流すことで、ユーザーは、待ち受け画面から速報テロップを見ることができる。
「超速報」には、全国規模のニュースを配信する”号外”と、県やブロック単位で選挙、高校野球などのニュースを配信する”速報”の2種類に分かれる。さらに、局地的な豪雨予測も早いタイミングで知ることができ、ユーザーの被害回避にも役立てられる。
3社は、最新のアプリ対応機種を持たないユーザーに対しても同等の情報サービスを提供したいという考えから、同年9月から「EZweb」を通じてウェブ版の提供も開始した。2010年9月末現在、会員は100万人を超え、その半数強がウェブ版のユーザーで占めている。
ウェブ版の提供に伴い、プッシュ型で多くの会員に一斉に情報を届けるメール配信システムが必要になった。これは、アプリ版の「超速報」を相当するものとして、ウェブ版会員に「超速報ニュースメール」を配信するためだ。朝日新聞社 コンテンツ事業センター次長の山田氏は、「いろいろな携帯向け情報サービスが存在する中、当サービスの最大の強みとなるのは情報の即時性と考えています。」山田氏の言葉が表わすように、アプリ版と同様にウェブ会員にもスピーディに情報を届けるため、メール配信システムには高い配信性能が求められた。
同社、コンテンツ事業センターの長原氏は、システム導入時の考えについて次のように語った。「以前のように自分たちで大規模なシステム構築して、サーバーを抱えるというような時代ではないと考えていました。そこで、低コストでASPによる利用が可能なメール配信システムを検討しました。即時性を実現するため、携帯向けにも高速で配信できることを選定の必須条件としました。さらに、当社とテレビ朝日は既に独自の速報システムを持っていましたので、複数にまたがる既存システムとの連結についても考慮する必要がありました」。長原氏は、 メール製品に関する情報を収集する中で、処理能力に定評があるユミルリンクのメール製品について知ることとなった。最終的に、朝日新聞社とテレビ朝日、KDDIの3社で他社製品も含めて比較検討した結果、総合的なコストパフォーマンスの高さを評価してユミルリンクの「Cuenote® FC(キューノート FC)」を導入することが決まった。
「実際に現場でニュースを配信する担当者にとって、何か新しいことを覚えないといけないのは負荷ですし、ミスも起こしやすい。そこをなるべく減らすため、今までと同じ業務フローで新しいシステムを導入したかった(長原氏)」。この要件に応えてユミルリンクでは、朝日新聞社とテレビ朝日が持つ独自のシステムはそのまま活かし、「Cuenote® FC」との完全な連携を実現した。結果、朝日新聞社の速報システムでは、管理画面からワンクリックするだけで、API経由でメールを送れるようになっている。また、テレビ朝日 コンテンツビジネス局コンテンツビジネスセンターの清水氏は、「当社では、SMTP通信を利用した独自の速報システムを利用していますが、ユミルリンクが専用に開発したSMTP受信プログラムを『Cuenote® FC』側に搭載してもらうことで、これまでの操作方法は殆ど変えることなく新たなメール配信システムと自動連携することができました」と既存システムとのシームレスな連携を評価した。
山田氏は、「このメールサービスを導入した目的は、これによって会員の数を増そうというより、今いる会員により満足してもらおうというものでした。ウェブ版会員にも、アプリ版に劣らないサービスを提供したいという発想です。ユーザーの皆さんに満足いただいているだろうと感じています」とメールサービスについての成果を述べた。
この春、「EZニュースEX」はエンタメ特集を立ち上げ、テレビや映画、スポーツ、芸能といったエンターテイメント情報の充実を図っている。プロ野球のイニングスコアなどのライブ速報もスタートしている。「EZニュースEX」の提供開始から1年半、同社はさらなる会員の拡大を見据えて、既に「Cuenote® FC」の改修を検討している。